BRAND

ラジオを聴いており、「最近買ったもの」や「最近買ってよかったもの」というテーマでリスナーからのメール募集する番組が結構な数あるなと感じた。Youtubeのいわゆる開封動画なる買ったものを紹介する動画も、一ジャンルとして確立されているくらいだから、どういう心理なのかは知らないが、多くの人が他人の買ったものに興味関心があるということは間違いないのだろう。

この前3年くらい使っていたイギリスのブランドのワイヤレスイヤフォンのチャージャーが突如発火発煙した。去年末にゼンハイザーのちょっといいヘッドフォンを買ったので、音楽を聴くときには大体そのヘッドフォンで聴き、イヤフォンは寝るときにpodcastを聴くか、外出時に使用するか、その2パターンの使用しか最近はしておらず、その時も枕元に置きっぱなしにしていた。
幸い、日中だったため発火発煙後にすぐにベランダに放り投げたため、大事には至らなかったが、部屋には明らかに体に悪い科学的煙臭が染みつき、数時間は消えなかった。
そのような普通にはあり得ない事態であったので、保証期間外ではあったが全額返金をしてもらった。返品返金の際にはご丁寧に菓子折りを持ってウチまで来てくれた。そのブランドのイヤフォンはそこそこに音も良くそんなに高くないので、数年後に発火の恐れはあるし、俺はもう買うことはないが、嫌味ではなく、お勧めしておく。

そのような事で、その返金された同額程のゼンハイザーの新しいイヤホンを買った。ゼンハイザーのヘッドフォンは今まで使った中でも一番と言えるほど音が良かったので、下位モデルではあるが同ブランドのイヤフォンにはそこそこ期待をしていたが、かなり大きく期待を下回り、podcastだけ聞く分にはいいか、という程度のクオリティーであった。
そして1週間使用をしていたのだが、急に左イヤホンの電源が入らなくなり、全く使い物にならなくなったため、返品をした。無駄な手続きを強制され、超めんどくさかったが、同時に全く気に行っていなかったので、手放すことができてほっとした。

それから数日間イヤフォンをWEBで物色し、返金額に少しだけ乗せてSONYのイヤホを買ってみた。ニジューというアイドルグループが宣伝をしていますよ!と商品タイトルにデカデカとに謳ってあったため、そのグループのことはよく知らないが、アイドル好きのオタクなのか、性欲の塊の若者なのか、そのあたりの層を狙っているモノを買うのは憚られたが、必要以上に高性能なイヤフォンは不要であったたし、価格や性能で比べたときにそれ以外の選択肢はないように感じられたので、謳い文句は聞こえないふりをして買ってみた。
結果的にそれが価格以上の価値を感じられる代物で、音も使い勝手もまあまあ良くて、最近は映画を見るとき以外は四六時中使っている。

「ブランド」というのは資本主義の中で差異を出すための便利な概念であり、それが信頼の記号としても機能しているわけだが、当然騙し打ち(に感じられる事)もある。なので、ブランドという強力で危うい概念、いわば幻想を盲信しないように常日頃から気をつけている。誤った方向へ導かれ、未だ失敗をしてしまうこともあるが。
現代この国に生きている以上は、矛盾を感じても資本主義から無縁ではいれないし、完全な反資本主義を実践することは不可能に感じる。
俺自身、名も無きモノへ愛着を持つ事を実践する事で日々の生活でバランスをとっていると感じる。
アート作品を自らの手で作るという行為がそれだし、俺にとって聖域であり、また反ブランド的な行為である。それは資本主義のシステムに乗ろうが乗りまいが、消えない。それが俺の好きなART。
世の中には、「ブランド」で身を固めていないとダメな不安症の人間というのもいる。数人あったことがあるが、その一人が先日たまたま見た男性ファッション誌、確かLightningという雑誌に出ていた。

昔にロゴやらウェブサイトやらを作ってやった、今は中目黒にあるらしいヴィンテージメガネ店の人間なのだが、「こうしてボクはオーナーになった!」みたいな寒気のするタイトルの経歴インタビュー的な記事に写真付きで出ていた。
「ブランド」に包まれていないと不安な「資本主義の豚」な人間であると俺は知っているのだが、そいつ自身不安症からくる過剰な消費と廃棄を繰り返すばかりか、傷のある中古眼鏡を極限まで削り「デッドストック」にし「ブランド」名の下にバカ高い値段で売りつけたり、それ以外にも詐欺行為を各種行っていたし、それに俺が加担をしたこともある。その様なリサイクル的行為を抜き出した上で記事上では「地球にもいいことをしているかもしれない笑」などと言っているばかりか、「尊敬する人物」にゲバラをあげており、何から何までも矛盾をし、相変わらず外面のいいクソ野郎だなと思った。
2度とこの類の人間とは関わりを持ちたくはないなと思ったし、こんな人間の下品な行為に加担をしてしまった自身の過去を猛省もした。

そろそろしまいにしようと思っていたが、一つ思い出した。Youtubeでお笑い芸人が紹介をしているのを見たのだが、「ヴィンテージTシャツ」という商売が流行っているらしい。絵柄の描かれた使い古されたTシャツにヴィンテージなる幻想を付与して数万円で売りつけるという。最近一番滑稽に感じた新たな「ブランド」商売であった。

MA [em-ei]

1985年 アジア・日本生まれ 東京都在住

2012年2月24日の自身の誕生日に初個展「BORN IN JAPAN”[F*** you, I won?tdo what you tell me ]」を活動の声明とし開催して以来、アーティストとして活動を続けている。
油彩での写実的表現から、ステンシルを用いてのスプレーペイント、自身の街でのグラフィティから着想を得たペンキで描かれる「ドリップレター」など、各種油性塗料を主に使用したペインティング作品、そして雑誌、写真、ドローイング、文字等を元にアナログとデジタルの双方でのコラージュ作品、またそれらを組み合わせて作品制作をする。

WEBサイト : zmawamz.jp/
ショップ : shop.hidden-circus.com/


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