昨日新宿のkino cinemaに塚本晋也の「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」を見に行ってきた。
もっと早くに行きたかったのだが、色々と予定が合わずようやく行けた。 前回のkino cinemaはデミ・ムーア主演のボディホラー「サブスタンス」を多分1年くらい前に見に行ったのが最後で、前回前々回とkino cinemaでの映画体験が立て続けに色々と最悪だったので、もうこの映画館には絶対訪れたくないなどと思っていた。
しかし今回の作品においては話題となっている様に、全国のkino cinema以外の映画館となんらかのトラブル的なものがあったせいで、kino cinema以外での公開は無くなってしまったらしく、選択肢はなかった。 これまでkino cinemaではち〜ちゃ〜いスクリーンでしか見たことがなかったのだが、今回のスクリーンは他の著名シネコンには劣るものの、映画館然としておりまあよかった。
何より、映画そのものがよかった。映画を見終わってからその足で原作本を買いチャチャっと数時間で読破できてしまうほど、映画を見終わったその後も思考をさせられ探究心を掻き立てられる。 本作はPTSDに苦しむベトナム帰還兵のアフリカ系アメリカ人のノンフィクション作品だが、戦争、沖縄、アフロアメリカン文化に強い関心がある私としてはまだまだ全く興味関心は尽きない。 ただ細かいそれらの内容は自分で映画を見て感じてー、という以外にはない。
そんな感じで、映画鑑賞後に何度も繰り返し思い出しているパーソナルな体験をちょっと書く。
私は沖縄へは10年ほど前から毎年最低1度は通っており、通い始めてまだ2−3年目くらいの夏のこと。 妻と夕方まで二人で海で泳いだ後、海の近くのスーパーへ向かった。時間帯的に駐車場は7〜8割程度は埋まっていたが、チラホラあった空きスペースへ通常通りレンタカーを駐車し、財布とケータイを持ちスーパーの入り口へそそくさと歩き出した。
その直後、背後から大きな声でこちらへ向かって巨体の中年の黒人が英語で怒鳴り声をあげていた。周りを見渡しても他に人はおらず、明らかに我々に向かって怒りを向けている様子であったため、え?と、とっさに話を聞いてしまった。
我々の車の隣に駐車していた車はその巨体には似つかわしくない、小さく丸みを帯びたフォルムの、フロントライトのカバーが黄白濁に劣化した小汚い型落ち日産のマーチで、彼はそのドライバーだった。我々が駐車をして車から降りるまでの間にその自車の中にいたらしく、妻がドアをそのボロマーチにぶつけてきたと主張をしてきた。
一応妻に確認をするもその様なことはなかったとのことであったため、そう伝えたが、「いいや!ぶつかった!車が揺れた!」と強弁をしてきた。私としてもなんか様子のおかしい人間の話より、妻の話を信用するし、「いや、ぶつかってないってよ!」そうとりあえず再度言い返した。だがそいつの怒りはエスカレーションし、さらにボリュームを上げて同じ主張をしてきた。
ならばと思い、「じゃあぶつかったという証拠を見せてくれよ、ドアは開くとこの位置でお前の車にぶつかるはずだが、ここには何も傷はないぞ?」そう反論をしたが、「いや車が揺れたんだ!絶対ぶつかった!」そう譲らなかった。
「だったらその揺れはドアを閉めるときに振動でも感じたんじゃないか?」そう言い返すも納得せず、その後5~10分間、声を荒げて同じ主張を何度も繰り返すのみ、こちらもそれ以上言うことはなく、同じ主張を繰り返した。するとパッと急に、もういいやーといった雰囲気で話を終わらせにかかってきた。
こちらもその隙を逃さず、「じゃあいいな、バーイ」といった感じでその場をさっさと去った。 「なんなんだあいつ、メンタル問題あるな。そもそもあんなボロ車、仮にぶつかっていたとしても怒らないだろ」などと妻と話しながらスーパーの入り口へ向かったのだが、横目で振り帰り様子を伺うとそいつは上機嫌にクネクネと体をよじらせてダンスをしていた。無音の駐車場で。
そいつの人生は知る由もないが、風体から推測するに退役軍人であり、目つき・顔つきやその言動から推測するに、メンタルに問題を抱えていたのではないかと、感じられた。帰還後のPTSDではなくパーソナルな問題からあの状態になってしまったのかもしれないし、当然その問題を引き起こした原因もこちらが知る由もない。 この程度のパーソナルな体験が映画とどこまでリンクするかどうかはさておき、たかだか5分10分、意味不明な会話(いちゃもん)を交わしただけの中年のアフロアメリカンを「あいつ、今どんな人生送ってんのかな、」などと、地元の友達(もはや赤の他人と化した)を思い出すくらいの感覚で昨日今日と、この映画をきっかけに思い出している。
とりあえずこんな感じで、映画を見終わってから現時点で40時間くらいずっと「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」とその関連のこと以外まともに考えられない状態にさせられるくらい、パワーのある映画だったので、全員に強く勧めたい。
あと、いきってる感軽減のため、文章を書くときの一人称を『俺』から『私』へと今回から変更しました。


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